鋳造弾頭を作る工程

詳しくは今後少しずつ撮影して説明したいと思いますが,ここではまず全工程の流れだけ説明します.

【工程1】 弾頭鋳造
lead melter (pot) で鉛などを加熱融解します.
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もちろん鍋で溶かして,柄杓(dipper)ですくって型(モールド)に流し込むことも出来るのですが,このタイプのポットは底にバルブがついていて,下から溶けた鉛を必要量出すことが出来ます.実はこのことは合理的でして,取り出す量の調整はもちろんですが,鉛合金に含まれる酸化物などの不純物は鉛より必ず軽いため浮きます.これをすくい取って捨てることで綺麗な合金を作ることが出来ますし,たとえすくい取れなくてもバルブが下に付いているということは,きれいな鉛合金がそこから出てくる,すなわち不純物はモールドに入らないのです.また鉛蒸気(ヒュームも含む)は有害ですので,ポットの上部は強制排気したり,ファンで向こう側に流したり出来ますが,鍋だと上をあけておかないと作業できないので,このようなことがしにくいという欠点があります.ポットもそれほど高いわけではないですし,どっちにしても日本だとそれほどたくさん作ることはしないので,このようなタイプを使った方がいいと思います.(アメリカだとピストルをバカスカ撃つ人も多いので,一度に何十キロもの鉛スクラップを溶かす場合があります.このような時は大きな鍋で鉛を溶かしてインゴットを作り,それからキャストしたりします.日本だと個人レベルでは鉛スクラップから作るより,インゴットやチップから作る方が安全です.)なおこのような製品はアメリカ仕様が出回っている数が多く定格が 120V (または110V)になっています.日本は 100V なのでパワーは落ちるようですが,私の経験上は問題なく使えています.

原料となる鉛をはじめとした合金は別途調達することになりますが,スラグで使うような純鉛でしたら,釣り具のおもりを溶かしたりすることも出来ます.ライフルだと純鉛はちょっと柔らかすぎるので,錫などとの合金を使います.これは業者が何軒もあって通販でも買えます.
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溶かした鉛合金は型(モールド)に流し込みます.
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普通はモールド(型)とハンドル(柄)は別売りになっていることが多いので注意しましょう.ハンドルはどのメーカーのも一見同じ形をしていますが,微妙にサイズが違って付かないパターンもあるので,互換性情報を持っていないのであれば,モールドと同じメーカーのハンドルを使った方が良いです.

モールドに流し込んで何秒かおいておけば固まるので,スプルプレートを木槌でたたいて湯口を切り,モールドを開放し,バケツに張った水の中に出来上がった弾頭を落としてこんで冷却します.これで鋳造は終了です.

【工程2】 ガスチェックの準備
出来合のガスチェックが買えれば,それを使う方が簡単ですが,そこそこの値段がすることと,現在アメリカからの許可を取らない個人的な輸入ができないので,自分で作ります. gas check forming die などで探せばいくつか見つかると思いますが,私は別の記事にも書いたように Patmarlins の checkmaker を使っています.
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仕組みは簡単なのですが,銅板を丸く抜き出す時にかなり力がいるのと,成形するときの雄型を固定する方法があまりよくない(イモネジ1本で固定している.本当はもっと確実に止まる方法をとるべきだと思う)のが欠点です.と,まあ細かいレビューはまたあとでするとして,とりあえずこのダイはプレスに取り付けて使います.これで 0.3-0.4mm厚程度の銅板やアルミ板から希望する口径のガスチェックを製作します.
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【工程3】 ルーブサイザーにかける
ルーブサイザーの機能は3つあります.まずは(1)ルーブを弾頭の lube groove (溝)に圧入すること.ついで,(2)鋳造したままの弾頭の直径,要するに driving bands の部分は規定のサイズよりわずかに大きいので,この部分をダイに圧入することで正しい直径に圧縮(研磨?)すること.そして(3)ガスチェックを装着することです.これらが同時に出来ます.ルーブサイザー本体も各社から出ていますが,見た目は大体こんな感じです.(これは Lyman 4500)
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実際の作業にはルーブサイザーに加えて,サイジングする弾頭にあわせてトップパンチとサイジングダイが必要です.
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トップパンチ

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サイジングダイ

サイジングダイは口径で決まりますが,トップパンチは弾頭の先の形で決まるので,簡単に言えばモールド毎にそれぞれ違うトップパンチが必要です.モールドを買うときにどのトップパンチが対応するか書いてあるので,その指定通りに買えばOKです.が,違うパンチを使ってプレスすると弾頭が変形するので注意です.
あ,あともちろん消耗品としてルーブもいります.
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このルーブは硬さがいろいろあって,弾速を速くしたければ基本的には固いルーブを使うことになりますが,常温でかなりかたいルーブだと,ルーブサイザーでも圧入できないため,ヒーターを使います.ヒーター付きのルーブサイザーを用意しておけば,どっちのルーブでも使えるのでいいかとは思います.ちなみに現在私が使っている Lyman ALOX bullet lube は 2000fps くらいまで使えるとされていますが,これだと十分柔らかいのでヒーターは必要ありません.ルーブの成分は蜜蝋(beeswax)等ですが,いろんなレシピがあってこれを自作するのも楽しいでしょう.

とまあ,このような工程を経て,ライフルの自家鋳造弾頭が完成するわけです.それぞれの工程に関してはまた別に説明していきたいと思います.

ちなみにスラグの場合は鋳造した弾頭をそのまま使うのが普通ですから,上で言うところの工程1で終了します.工場装弾は結構高いですが,自分で作る場合に使う道具はポットとモールドくらいしか要らないのでそれほど出費もかさまないため,日本のスラグ射撃界では自分で作る人が結構多いですよね.ライフルはこの延長線かと思いきや,結構お道具も増えてしまうのと,精度を追い求める限りは,ジャケット弾の方が弾速も出せるし有利なため,ライフルだとスラグに比べて自家鋳造をしている人は少なそうです.アメリカでは射撃趣味における一分野なのですけどね.

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