推進火薬の腔圧プロファイル

ある条件,すなわちバレル長,ツイストレート,口径,弾頭重量,形状などにおいて,最適な火薬を選択するには,単純化すれば,望む弾速を得るのに必要な薬量が最小になるものを選べば良い,という話は以前書きました.本稿ではもう少し掘り下げてみたいと思います.

reloading handbook などで見かける腔圧プロファイルはこんな感じになっています.
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縦軸は腔圧(バレル内圧)で,横軸は時間,もしくは弾頭のバレル内位置になります.原点は点火した瞬間なので,圧力,時刻あるいは位置は0であることを示します.例えば曲線1に注目しますと,点火後圧力は急激に上昇して,ある時刻に最大となり,そこから次第に下がっていきます.そして弾頭はある時刻 td にマズルから射出されます.弾速はこの曲線を t0 から td まで積分した値の平方根に比例します.なぜならこの値は弾頭が受け取った仕事(=火薬エネルギー)だからです.

さて市販されている火薬は形状などを変えて燃速を調整してあります.もちろん成分による差も若干ありますが,基本的には同じ重さの火薬は同じエネルギーを持っていると考えて良いでしょう(*).この場合 burn rate の遅い火薬はどのようなプロファイルになるかというと,上図でいうと2に相当します.十分な時間燃焼させた場合の総エネルギー(積分値)は1も2も同じになりますが,弾頭がマズルから出た後は弾頭の増速に寄与しない,すなわち無駄なエネルギーになってしまいますから,弾頭速度は1の方が大きいことになります.要するに遅い火薬は弾頭がバレル内に存在する時間が長くないと無駄になるわけです.これは遅い火薬が使える条件としては,まず第一にバレルが長いということになりますが,それ以外に弾頭が重いとか摩擦が大きいという場合もバレル内にいる時間が長くなりますので適していると言えます.

では無駄がない1のような火薬だけでいいかというとそうではありません.それは最大圧力が大きくなり銃への負担が大きくなる問題があります.なので,2のような火薬で同じ速度が出せれば,その方が圧力が低くて済むわけです.ただし積分時間の制限から同じ薬量では同じ速度は出せませんので,同じ速度を出すためには量を増やすことになります.これは図中の2’に相当します.では,無駄は多いけど2’でいいじゃないかという考えもあるかも知れませんが,現実はそうは問屋が卸しません.なぜなら薬莢の容量によって詰め込める薬量が制限されるからです.狩猟用に使われるようなライフル(=バレルがそれほど長くない)の場合は遅い火薬をめいっぱい詰めても(コンプレッションロード),弾速は burn rate の速い火薬には及びません.結局のところはこれらのバランスで最適な薬種が決まってくるわけです.

handbook に載っているレシピは検圧銃によって計測された腔圧が書いてあります.もちろん max load は SAAMI の規定する最大腔圧を越えないところに設定されています.よって,これらのレシピの中から最小薬量で最大弾速が得られるものが,これまでに述べたところの最適バランスの薬種であるというわけなのです.(しかし試験データは自分の銃とは異なる環境で得られていることが普通なので注意は必要です.)

もちろんこれが唯一の解であるなどというつもりは全くありません.求めることは人によって違い,例えば最もグルーピングの良いレシピを選びたいという人が試行錯誤した結果が,これと異なる可能性は十分あります.これまで述べたのはあくまでも効率を考えた理論的な話で,人々の趣味嗜好とは異なります.ただ,どれを選べば良いか分からないという人がまず最初に手に取るものを選ぶための土台にはなると思います.

(*)正確にはシングルベースとダブルベースでは単位質量あたりのエネルギーは2割程度の差があります.

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