火薬学の基礎

図書館シリーズです.
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著者は立派な経歴の方なのですが,日本語の文章がちょっと変です.以前採り上げた新編火薬学概論の方が私には勉強になった感じ.でも力学の度合いはこっちのほうが大きいかな?まあ著者の専門が違うのでしょうね.直接火薬に関係していない一般的な化学分野の記述も結構あります. この本から得られた知識で私が役に立ったと思ったのは,火薬のエネルギーは燃焼ガスの温度に比例し,燃焼ガスの分子量に反比例するということですね.前者は当然だけど,後者がなるほどと思いました. シングルベース火薬はニトロセルロース(NC)が主成分ですね.発射力を増加させる,すなわち火薬エネルギーを増加させるには,燃焼ガスの温度が高くなるようにすればよいです.そこで生まれたのがダブルベース火薬です.これはニトロセルロースとニトログリセリン(NG)が主成分となります.反面,燃焼温度が高くなるので,銃腔を焼食してしまいます.そこでニトログアニジン(NQ)を足したのがトリプルベース火薬です.ニトログアニジンは燃焼温度がそれほど高くなく,水素ガスを発生させる物質で,これにより分子量の低い燃焼ガスを発生させることができます. 化学組成は製品によってかなり異なりますが,一例として下のような値(まるめています)が載っていました.
ダブルベース NC 77% / NG 20% トリプルベース NC 28% / NG 23% / NQ 48%
ダブルベースとあまり変わらない発射エネルギーが得られるけれども,燃焼温度は低めに抑えられるというのが,トリプルベースの利点となるようです.

減装弾の異常腔圧現象

リロード時に火薬を入れすぎると危なそう?とは素人でも思うことでしょうけど,実際は通常使用されるタイプのライフル用緩燃性火薬を使う限りは,薬莢にめいっぱい火薬を入れても危ないレベルに達するケースはそれほど多くありません.それより危ないのは,ライフルに間違ってピストルや散弾用の速燃性火薬を使うことです.いつもライフルで使っているような薬量で速燃性火薬を入れてしまうと異常に腔圧が高くなり,銃身が破裂,大変な事故につながります. 逆に火薬を少なくしていくとどうなるでしょうか.弾速が遅くなって,ある程度以上少なくするとバレルの中で停弾してしまいます.ライフルの場合は弾頭の除去は大変で,場合によると廃銃なんてことにもなってしまいます.まあそれは極端な例ですが,停弾しない程度に減装できれば,軽く撃てて体力的にも助かるし,日本では火薬は高価なので経済的にも助かります.ですから,盛りを少なく,数を撃ちたいって需要もあるわけです.例えば私とかね.笑 ところで昔から「極端に減装すると銃が破損するほどの異常腔圧が発生して事故になることがある」と言われています.しかし火薬メーカーも実験したそうですが,そのような現象は再現されなかったとのこと.どうせ素人のやったことだから,最初の弱装で停弾し,気付かずにもう一発撃っちゃったんじゃないの?なんて私は思ったのですが,そういうわけでもないらしい. 私も弾薬学という学問領域を広げたくて,金属学や火薬学などいろんな本を読んだのですけど,なかなかこの現象を説明したものに出会いませんでした.実はそれって火薬をたくさん売りたい人たちの創作で,半ば都市伝説みたいなものなんじゃ?なんてことすら思っていたりした昨今,専門書でようやくそれに近づく記述にあたりました. 火薬を発射用途に使う場合に求められる安全性の一つに「腔発を起こさないこと」というのがあるそうです.本来発射薬は爆轟(=破壊的な爆発)を起こしてはならないし,そうならないように作られているのですが,あるとき,火薬が -30 ℃ 程度の低温にさらされ,薬粒がくずれたことで,腔発を起こした例があるそうなのです.簡単に言えば,火薬が粉になっていると爆轟の危険があると言うことです.火薬は粒の大きさでも burn rate を調整しているので,理に適った話ではあります.が,粉になったからと爆轟までするとは知らなかった.
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この記述から推測すると,昔から「減装で異常腔圧が発生した」と言われているのは,このタイプの爆轟が起こったことによるものと考えられます.低温にさらされた可能性もあるし,そうでなくても薬量を少なくしていると,当然薬莢内で火薬が遊びます.このような状態で散々シャカシャカさせれば,中の火薬粒が崩れて粉末状になってしまうケースもあるかも知れません. 狩猟の場合,寒い中,弾を持ち歩いて,帰るまで結局使わなかったというケースはとても多いです.そうやって何度も出猟を重ね,薬莢内の火薬が段々粉になっていくと,いつか爆轟に至る弾が出てくるかも知れません.だから狩猟用の装弾は二猟期しか持たせないってことにしているのかも知れませんね.まあ私の場合,そんなに寒いところには行かないし,弾も大盛り(笑)にしてるので,そういう事故はないと思いますけども.昔から,火薬自体の経時変化で感度が高まって危なくなるのが原因なら,射撃用にも使用期限があってもおかしくないのに,なんで猟の弾だけそういうルールなのだろう?と不思議に思っていたのです. というわけで結論.減装すること自体が危険なのではなく,粒が崩れて粉になることで爆轟を招く可能性がある,というのが現在の私の考えです.またいつか新しい知見が得られたらエントリします. あ,ちなみに減装しすぎると,うまく燃焼しきれなかったりするようで,タール状の残滓が残ったりします.これはこれで良くないので,そこまでは減装しない方が良いでしょう.

新編火薬学概論

もちろん図書館シリーズです.
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かなり総括的な本で,我々の興味のあるところの小銃用の発射薬なり銃用雷管に関する記述も少しはありまして,興味深かったです.もちろん爆薬関連の方が詳しく書いてありますが,以前ご紹介の「火薬のはなし」よりは銃関係マシマシな感じが良かったです.内容的には火薬取扱関連の資格試験の参考書になりそうなレベルです. この本からは,役立つかどうかは別として,いくつかの知見が得られました.例えば雷管は現在無銹爆粉(サビが出ない)で,組成としては
トリシネート 35-45% テトラセン 3-6% 硝酸バリウム 35-45% 三硫化アンチモン 7-15% 珪化カルシウム 10-15%
とありました.wiki では
トリシネート 36% テトラセン 3% 硝酸バリウム 40% 硫化アンチモン 11% カルシウムシリコン 10%
とあったものの,参考文献が載ってなかったので,いまいち信頼できなかったのですけど,大体一緒ですね.主成分となっているトリシネートは別名トリニトロレゾルシン鉛といい,鉛が含まれています.なので,いずれは何か別なものに入れ替えられるかも知れませんね.またこの物質自体は水に溶けないということなので,雷管の不活性化に水は使えない可能性があります.まあ自分で処理することはないと思いますが,水につけてそのまま捨てたりするのは危ないかも知れません. そうそう,昔の雷管ってサビが出ると聞きますが,それはこんな組成らしいです.
ロダン鉛 Pb(CNS)_2 15-30% 塩素酸カリウム KClO_3 35-55% 三硫化アンチモン 0-30% 硝酸バリウム 0-10% TNT 3-10% ガラス粉 0-10%
昔のサープラスとかは撃つと銃が錆びると聞いたことがありますけど,こういうのが使われていたのでしょうね.
posted by ともぞう at 19:00Comment(0)

弱装で Concentricity は効くか?

ライフル射撃では弾速を上げ目にした方がまとまりが良くなると言われていて,実際私の経験でも弱装(火薬を少なくする)では通常よりもバラツキが大きくなる傾向です.そんな弾でも Concentricity Tool を使って runout を小さく(真っ直ぐ)するとグルーピングは改善されるのか?という実験を行いました.
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まず実験条件は以下の通りです.
30-06 case: Lapua full length sized primer: WLR powder: H4895 25.0gr bullet: Sierra 150gr Spitzer Browning(Miroku) X-bolt barrel length: 22" twist rate: 1:10"
バレル過熱のデータへの影響を相殺するために,ツール使用したものとしないものを交互に撃って調べます.スタートは 50m における ES (CTCグルーピング) です.
(1)ツールなし 25mm (2)ツール使用 27mm (3)ツールなし 36mm (4)ツール使用 33mm (5)ツールなし 38mm (6)ツール使用 39mm
見やすくするためにツール使用時の数値を赤にしました.各5発で計30発をほぼ連続で撃ちました.寒かったことに加え,弱装は発熱量も少なく,標準弾のようにバレルが触れなくなるほどではありません.過去の実測では先台先の上が最も温度が上がることが分かっていて,そこが約 50℃ になった程度です.事情により今回も枕使用なので,温度上昇よりも私の集中力の欠如の影響のほうが如実に表れています.段々 ES が大きくなってきていますからおわかりでしょう.苦笑 ただし平均を取るとツールを使おうが使うまいが見事に一緒の値になってしまいました.要するにツールの効果は,あっても5発撃った疲労の影響と同程度ということになります.それと作りっぱなし(修正前の段階)で runout が 1mil を下回っている弾も多かったので,実のところは使用した弾頭は差が出にくい形状だったのかも知れません. さてここではグルーピングは 1mm 単位でしか読めないので,的を 100m に離してみます.単純計算では ES が倍くらいになると考えられるので,より差が見えにくくなるかなと考えたわけです. その結果
(7)ツールなし 33mm (8)ツール使用 28mm
となりました.あれ?倍になると思いきや,50m のときとそれほど変わらないオーダーになりましたね.ツールの効果については1回づつなのでなんとも言えません.では条件を厳しくして 10 発のグルーピングを測ってみましょう.
(09)ツールなし 53mm (10)ツール使用 74mm (11)ツール使用 42mm (12)ツールなし 86mm
さすがに5発の時と比べると大きくなるので分かりやすいかと考えたわけです.この結果からは平均をとるとツールを使った方が多少良くなる傾向にはあるような気がします.ただ実は中にはうっかり落とした弾もあって,全ての弾が使用時に Concentricity が確保されている保証がなかったりするのと(実際,flier もあったし),本当は SD とかも求めたいのですが,面倒なのでこれだけで今は比較すると,現時点で言えることは 弱装弾を使用した場合,50m では差がほぼなかったが,100m だとツールの効果が多少あるような気がする. という感じで,現時点では,プラシーボか?と言われても仕方ない結果になっています.今回は的紙を十分用意していなかったので,これくらいしか言えませんが,効果があるよ,または,効果は無いよ,と自信を持って言いたいので,さらに実験は続けます.

meplat まわりを考える

射撃というと銃にこだわる人は多いと思いますが,究極一番大事なのは弾頭なのです.銃はその弾頭を投擲する手段にすぎません.もし同じ弾頭が同じ弾道,弾速で飛翔していれば,発射した銃が拳銃であろうと大砲であろうと,更に極端なことを言えば手で投げていようと(さすがにそれは無理だけど),目標に与える作用は全く変わらないのです.そして今時の銃はそんなひどいのはないですからどれを使ったって大した差は無いと言えなくはないわけです(極論).まあ趣味ですからどこにこだわったって,それは好みの問題ですけどね. というわけで,銃へのこだわりは射撃を始めて早々に吹っ切れた私の軸足は,長いこと(今でも)弾造りにあるわけです.そして前で述べたように,結局のところこだわるべきは弾頭そのものだなぁと.鋳造弾は楽しいけども,やっぱり市販弾頭ってよく考えられていていいなぁと思うのです.そのため,そこをもうちょっと改善したいと考えたときに,自分で出来ることといえば meplat に注目することだろうと考えました.meplat というのは弾の先っぽのことを言います.
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ここが変形していると命中精度に差が出ると言われています.まあ定量的に評価する腕は私にはないですけど.笑 ちなみにこの部分をトリミングする道具が売られていました.
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これを使ってみようかと思ったのですが,なんとディスコンです.他にはあるかな?と探すと,midway にはこんなのがあります.
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これも良さそうですが,ここのお店は日本に送ってくれないので,買うとしても今度渡米の際についでに買ってくることになりそう.まあそんなに急ぐことはないからそれでもいいか. あとはこんなのもあります.Whidden の bullet pointing die です.
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しかしこれは前者二つと違うものです. 前者に関しては meplat をまっすぐに削る製品ですが,実は meplat が大きくなると BC 値が大きくなり,drag (弾頭の進行を妨げるように働く力)が増えるとされています.最後の die はこれを小さくするための製品で,長距離射撃には有利に働くと考えられます.なので,これらを併用することが優れた弾頭を作るのには望ましいと考えられます.まあそこまで長距離なんか撃つ機会はないのですけどね.笑

Magnetospeed の過渡弾道に与える影響

Magnetospeed というのはこんな感じの弾速計です.
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センサーを銃剣のようにバレルの下に取り付けます.とても軽くて,光学式ではないので照明環境にも影響を受けない利点があります.が,着弾点がセンサー装着の有無で変わってしまうと言う欠点があるというのは以前エントリしたとおりです.流体はかじっていませんが,弾道学は少し勉強しましたので,マズルブラストが過渡弾道に影響を与えていることは分かっていました.先日 TK さんから横につけたらどうなる?というコメントをいただいたので確認のため実験してみました.
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こんな感じで左につけたり
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右につけたり
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はたまた上につけたりしました.
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上だとスコープが見えなくなっちゃうと思うかも知れませんね.あってないところから見ると確かにこんな風に影になっちゃいます.
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けども,レンズ径の方が大きいので,的紙に焦点を持ってきたときには,多少暗くはなるものの的紙はちゃんと見えるのですよ.なので,問題なし. で,実験結果ですが,K氏が解析して使いたいと言うことなので,今ここで出すのはやめておきます.しかし,傾向としては左につければ着弾は右へ,右につければ左へという感じで,明らかにセンサー取り付けの逆方向へ着弾がずれていることを確認しました.ざっくりですが 1 MOA 近く変わってくるので注意しましょう.

雷管ブランドによる着弾点の変化

私だと雷管の差があっても,自分自身の腕の悪さにマスクされてしまうので,せいぜい弾速を測ることくらいしか出来ません.実際に以前測ったときにはそれほど大きな差では無かった記憶があります.WLR より FIO の方が分散が大きいとか,そんな結果だったような. ところがこの間の射撃会の時に,我らが青年部長(笑)のOさんが「雷管の差ってあるもんだねぇ」と言って的紙を見せてくれたのです.それによると 50m でだいたい 1cm くらい着弾点の高さが違うようなのですね.それぞれ5発撃って,ひとまとまりの穴になってるので,その差が明確になっていました.これは面白い結果ですよね.確か WLR と FIO と言ってたと思います. 零点規正設定を変えなければ,弾痕があがったら弾速もあがったということになるわけですが,実際に 1cm 着弾があがるにはどれだけの弾速の差があれば良いでしょうか.Ballistic Calculator で計算してみますと,距離 50m において零点規正を変えず,2500fps に比べて 1cm 着弾をあげるためには弾速を 3400fps まであげないといけません. 雷管違いによる弾速の差はこれより桁違いに小さいですから,これは銃自身のブレ(跳ね上げ量)が変わったと考えるのが妥当では無いかと思います.薬種薬量は同じようですが,燃焼速度にわずかな差があって,思いの外それが銃の動きに大きな差を与えていることが推測されます.よく薬量を変えるとグルーピングが変わると言いますが,グルーピングは変わらなくても,高さ自体が変わるのが興味深く思いました. いろいろ試してみたいですが,私にはこの実験を自力で出来る腕が無いのが残念ですねぇ.苦笑

平滑銃身には Lee より Lyman かも?

世の中の種々の弾頭の先が尖っているのは空気抵抗を減らして遠くまで飛ばそうという意図があるからですが,そうなると弾頭の重心が後方に下がります.そしてこれが空力的な中心よりも後ろになると静安定性が欠けてしまいます.静安定性が欠けても飛翔安定性を維持する方法としてスピンを与え,ジャイロ効果を得ることが一般的です.それがライフルというわけです. しかしスラグの場合ハーフライフルでもなければスピンはほとんどかかりません.フォスター弾頭のモールドで市販されているものはいくつかあると思いますが,日本で入手が容易なのは Lyman か Lee です.フォスター弾頭は後ろが中抜きされていて,弾頭の重心が前の方になるようになっていますが,Lee のものは Drive Key といってリブが中に入っています.もともとライフルバレル(日本ではハーフライフル)の散弾銃身でワッズが回転する際に,弾頭がそれに食い込んで,回転に弾頭もついていくための仕組みですから,もともとが平滑銃身用ではありません.それに前述のような理由で,リブの分,重心が後ろに下がるので安定性の意味では不利になりますから,平滑銃にも使えるかも知れないという推測だけでこれにすると,安定性は Lyman より悪くなる可能性があると考えられます. ただ Lyman でも横転した弾痕を見ているので,一周まわって(笑)丸弾のほうがいいかも?と思った次第です.(Lee drive key のモールドは持ってないので比較していません)
posted by ともぞう at 00:15Comment(0)

【カンペ】.308cal 150gr SPBT 3000fps

大島さんのご要望にお応えしまして,弾頭を仮に Sierra Spitzer Boattail (GameKing) と仮定してカンペを出してみました.スコープ高は 1.5" で,100 yd ゼロです.
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残存エネルギー的には 500 m くらいで 1000 ft lbs を割り込むので,このくらいが限界でしょうか. 弾道計算には気温や気圧,湿度なども影響を与えますが,狩猟で主に使うようなレンジでは微小な補正で間に合うのではないかと思っています.そもそも考えるべきは drop だけでなくて windage も大きいです.というのも,風で無視できない大きさになります.具体的には弾道に直角方向から 10 mph 程度の風(だいたい樹木の葉が揺れる程度の柔らかな風)で上記条件において 300 yd で 8" ずれます.このときの ドロップは 12" ですから,かなりの割合ですよね.

薬量とσの関係

というわけで,DC-435 の load data を作ったのですが,このとき5発で平均を求めているので,ついでにσ(標準偏差)も求めてみました.要するに弾速のばらつきを示すものです.条件は以下の通り.
barrel length: 22" twist rate: 1:10" chronograph: Magnetospeed v3 case: Winchester 30-06 bullet: Sierra 200gr HPBT primer: Winchester Large Rifle powder: DC-435 measure: Lyman Gen6 standard deviation calculated with 5-shot velocity
その結果がこちら.
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青破線はなんとなく見えてきた近似直線をアイボールフィッティング(笑)で描いたものですが,これを見ると,54.5gr にσが小さくなる特異点があるように見えます.もちろん,たった5発での計算ですし,分布検定もしていません.でも実際に射撃をするとある薬量でグルーピングがよくなることがあるというのは広く知られていることですから,それがこういう点だったならば,薬量最適化に資する可能性がありますよね.最適点を求めるのがメクラ撃ちでいいのですから.まあそんなうまい話はそうそうないとは思いますが,そんな想像をするのもまた楽しいものです.次に行ったときにでも検証してみましょう.
posted by ともぞう at 22:35Comment(0)

Knock Out Factor

Podcast で Taylor KO Factor という狩猟におけるストッピングパワーを評価する指標が出てました.wiki だとここにあります.以降 TKOF と表記します. この TKOF は 弾頭重量(lb) × 弾速(fps) × 弾頭の直径(inch) で表せます.例えば 7.62mm × 51mm NATO の場合は,150 gr, 2820 fps, 0.30" で 18.1 となります. そして各種カートリッジにおける TKOF の例は以下の表の通りです.
TKOFCartridgeBullet Weight [gr]Velocity [fps]
1.33.22 LR301400
8.70.243 Winchester852950
14.9.30-30 Winchester1502250
19.6.308 Winchester1682650
20.8.30-06 Springfield1702850
24.9.300 Winchester Magnum1803146
35.5.338 Lapua Magnum2502940
41.0.375 H&H3002550
もちろん他にもこの手の評価指数はいくつかあって,例えばよく使われるのは,単に仕事量で評価する方法ですね.鹿などを獲るには 1000 ft-lbf くらいは欲しいとかいうあれです.このときは弾頭の大きさ自体は評価に入っていません.しかし TKOF では同じ弾頭重量,弾速でも弾頭の直径が大きい方が衝撃が大きいという評価をしています.ただ TKOF でも弾頭形状(HPとかSPとか)については評価に入っていないので注意が必要です. ちなみにスラグではこの計算でどのくらいになるかというと,12Ga, 1 oz, 1500 fps でなんと TKOF 66 です.もちろんマズル直近での話ですが,パンチ力は超大口径ライフルよりあるという評価ですね.うーん,どうなんだろ. 散弾も考えてみましょうか.例えば私の鴨弾の場合は4号(0.13"φ, 3.3gr)で 1300 fps とすれば TKOF 0.08 です.まあ数発は当たりますから弾数に比例するとすれば,0.2 くらいは与えてるってことですかね.もちろん弾速が落ちるのは計算に入れてないですけど. 鳩弾は7半を使っているので 0.095"φ,1.29gr です.同じ弾速でも4号に比べて TKOF は 1/3.5 になってしまいます.矢に弱いので TKOF 0.1 もいらないって感じでしょうか. というわけで,評価法の一例として Taylor KO Factor を考えてみましたが,極端な例だと実際を反映できない可能性があり,適用できる範囲は検討する必要があります.個人的な見解ですが,終末弾道を考える限り,弾速は指数関数的に影響を与えるだろうと考えています.とはいえ,このような評価があるというのは,弾の直径も実猟には効いてくるはずだという経験則を反映させた先人の知恵の結果だと思うので,他にもいろいろな評価法を調べてみたいと思います.

計算ついでに .30 cal RN と 12番スラグを比べてみる

弾道計算に必要なパラメータはいくつかありますが,スラグのデータってあまりないんですよね.で,マズルローダーとかに使う弾頭とかを参考にして,仮に BC を 0.2 G1 と置いてみます.まあ近距離ではあまり大きな差は出ないだろうという想定ですが. 12GA, 475 gr, 1500 fps の場合は以下のようになりました.drop は 50 yd zero としています.
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だいたい鹿を倒すのには 1000 ft•lbs くらい必要だとされているので,純粋にエネルギー的に考えると 250 yd くらいまでと考えられますが,そのときの drop が 50" 以上あるので,移動している獣を狙うのは結構難しそうです.バイタル狙いでとか走っているとか考えると,ざっくり 10" drop くらいまでとすれば,150 yd 以上は困難かという判断ができます. 一方,30口径のライフルだとどうでしょうか.イノシシには BC 的に不利にはなりますが RN を使うのが一般的です.で,Sierra Pro-Hunter 180gr RN を 2700 fps で撃った場合を考えました.zero は 100yd.すると,
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エネルギー的には 400yd くらいいけますが,そのときの drop は 40" もあります.こちらも素直に狙うなら 250 yd くらいまでということになりそうです. 単純に計算するとこの位の差ですが,drop 値が分かっていたとして,弾道の安定したライフルだったらそれで当てることも可能ですが,スラグの場合は弾道が不安定なので drop を計算しなければならないくらい遠距離になると当たるか当たらないかは運次第という感じになりそうです.

270 Win の弾道

今回の検索ワードはこちら
270winの弾道
計算はできるのですが,パラメータが少なすぎますね.なので勝手に仮定してみます. 弾頭はだいたい 130 gr くらいが適当みたいですね.で,Lyman 50th のレシピをざっと見ると,これを 3000 fps 見当というのが妥当そう.ですので,BC などの設定は Sierra 130 gr SPBT を基準にして計算してみます.すると...
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あ,100 yd zero にしてますが,drop はこんな感じのようです.
posted by ともぞう at 15:19Comment(0)

【勝手にFAQ】短い銃身は広がるのか?

今回の検索ワードはこちら
銃身長 散弾 広がり
多分ですが,銃身が長い方が散弾の広がりは小さく,銃身が短いほど散弾は開く,と考えておられるのかも?と想像します.なので,表題のような疑問だとしましょう. 自分自身で実験をしたわけではないのですが,物理学的観点から考えれば銃身の長さと散弾の広がりはほぼ無相関だと考えます.もちろん銃身長の範囲は常識的な 24" ~ 30" くらいの想定で,チョークの影響はどちらも同じだと仮定してです.というのも,散弾は銃口を離れるまではカップの中に入っており,離れてから少し飛翔した後,カップが受ける空気抵抗により散弾より減速が大きくなって分離するという現象が過渡弾道(砲内と砲外の間の遷移状態)で起こるからです. しかし市販されているクレー用の上下二連は,遠距離を狙うトラップ銃は 30",近距離になるスキート銃は 28" というのがスタンダードですよね.で,確かにこれらは散弾の開き方も異なります.しかしこれはチョークの影響が大きく,銃身長は関係ないと思います.もちろん 28" 銃身の方がターゲットまでの散弾の飛翔距離は 30" のそれに比べて 2" だけ長い(笑)わけですから,その分開くでしょうけど,ここではその影響は無視ですよ. ではなぜ遠距離用の方が銃身が長いか.それは長い方が狙いが正確になるからだと思います.要するにクレーの場合はリブで狙いますから,基線長(ここでは照星と中間照星もしくは目との間の距離)が長い方が,角度分解精度が高くなるというわけです.というわけで,トラップ銃が長いのは散弾の開き方が小さくなるからと言うのではなく,狙いがより正確になるというのが理由ではないかというのが,私の見解です.といっても,私も素人ですから見落としている要素はあるかも知れませんが. ちなみに過渡弾道学的に考えると(法的には許されませんが)極端に短くして 10cm とかにしたとしますと,砲内での加速が十分できませんので,銃口を離れたときに後方からの燃焼ガスの影響をガスシールが過大に受け,モーメントが発生することでカップの進行方向に対する角度が大きくなり,散弾が大きく広がると推測します.もちろんやったことはありませんが....ですから,ここでいう銃身の長短においてこのような極端な例は考えず,ある程度の幅の中での仮定で,また火薬や他の条件も散弾銃で使用される一般的なものを念頭においています. 【余談】20" バレルでマグナムを使うと,結構炎が上がってみえるようです.ですから,このくらい短いと過渡弾道がガスの影響を受けて散弾が広がりやすくなる可能性はあるかも知れません.ただパターンを取ったわけではないですし,差がこれに起因すると断定できるほど上手ではないのですが.笑

【勝手にFAQ】BC値とは

今回の検索ワードはこちら.
BC値とは
はい,簡単に言うと drag です.これは弾頭が飛行するときに空気抵抗によって後ろに引っ張られるように働く力のことです. ここで取り出したるは Hornady 本.笑
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いろんな弾頭を作っている会社なので,この本にはそのあたりのことがあっさりながら説明されています.それによるとBC値は,標準弾頭(*)の drag を対象弾頭の drag で除したもの,となっています.ですから,大きければ大きいほど drag が小さいことを示しています.そしてこの値自体は高度,気温,気圧,湿度によって変化します.また弾速によっても変化するので,常に一定の値を取るわけではありません. 結局のところ BC 値は弾頭の優秀さを示すものではないので,BCが大きいから良い弾頭,BCが小さいから悪い弾頭,という話ではないと言うことです. 現在 Hornady の多くの弾頭は,200yd の地下試射場で得られたデータから BC 値が計算されています.また長距離用の弾頭(例えば ELD-X など)の場合は,もっと遠距離でドプラレーダを使って測定するそうです. なお BC 値の差は遠距離になるほど効いてきます(ドロップが小さくなる)が,逆に近距離ではほとんど無視できるとされています.狩猟ではそこまで遠距離の獲物を撃つことはあまりなく,terminal ballistics の観点からすればSD値や弾頭の内部構造の方が重要です. (*)標準弾頭:米陸軍弾道学研究所のG1モデルを使うそうです.こんな感じの弾頭ですね.
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posted by ともぞう at 08:22Comment(0)

【勝手にFAQ】ツイストから弾頭重量を求める

今回の検索ワードはこちら
11ツイスト30‐06ライフル適合弾頭重量 バレル11ツイストに最適な弾頭重量 30‐06バレルツイスト1:11適合弾頭180グレイン
30-06 でツイストレートが1:11"って銃があるんですねぇ.たくさん検索されてましたが,リンクされてなかったようですみません.弾頭長とツイストレートの関係を示す公式であるグリーンヒルの公式というのが知られていて,こちらなどでエントリしております. この式から最適な弾頭長を推測すると,ツイストレートが 1:11" の場合,鉛コアで
1.55" (弾速が2800fpsを超える場合) 1.29" (これより遅い場合)
となります.銅弾の場合は比重が軽くなるので,仮に SG=9 とすると,
1.41" (弾速が2800fpsを超える場合) 1.17" (これより遅い場合)
くらいだと考えられます. お手持ちの弾頭を測ってみないとわかりませんが,例えば Barnes の 180gr の銅弾は長さ 1.475" くらいだと思います.最適値よりわずかに長いくらいなので大丈夫そうですが,長くなるほど必要なツイストが短く(早回りに)なります.逆に小さい弾頭は必要なツイストレートが緩くなります.この最適値からずれる場合は,ツイストは急な方が緩いよりはマシだと聞いていますが,私くらいだとその差はよくわかりません.笑
posted by ともぞう at 06:00Comment(0)

【勝手にFAQ】クレー射撃における散弾弾道

今回の検索ワードはこちら
トラップ射撃+弾道軌跡
例えば水平に打ち出された弾丸がどのような軌跡を描くか考えてみましょう.空気抵抗を無視すれば,水平方向には初速のまま運動し,垂直方向には重力による落下運動が発生し,実際の軌跡はこれらのベクトル和となります.斜め上に撃ち出した場合もこれと同じで,水平方向成分は初速の水平成分が保存され,垂直方向には打ち上げによる上方向の初速が存在しますが,下向きの加速度をもつ運動となります. 実際の数値で考えてみましょう.クレー用装弾は大体初速が 400m/s くらいです.クレーまでの距離を大体 40m くらいとすれば,散弾を射出してからざっと 0.1s で着弾します.ここで銃身の延長線上からの落下量を hd [m] とすると,
hd = gt2/2
となります.ただし t [s]は飛行(落下)時間,重力加速度 g = 9.8 m/s2 です.これに先ほどの 0.1 s を代入すればわずか 5cm に過ぎません.もちろん実際には空気抵抗の影響もあるわけですが,オーダーとしてはそれほど違いはありません. 結局ショットコラムの大きさ(フルチョークで 40m 先だと径は大体 70cm)を考えれば,その中に入ってしまう程度の落下量ですから,通常のクレー射撃の範囲ではほぼ射出時のバレル延長線上を直線的に飛行すると考えて狙えばよいかと思います.
posted by ともぞう at 06:21Comment(0)

【勝手にFAQ】弾道曲線

今回の検索ワードはこちら.
300wsm弾道曲線
まず最初に確認しておきたいのは,弾道曲線ってカートリッジで決まるわけじゃなくて,弾頭と初速で決まります.ですから例えば 150gr を 3000fps で撃ち出したとして,それが 300WSM からであろうと 30-06 からであろうと弾道は一緒です. カートリッジ種類から読めるのは,だいたいこのくらいの重量の弾頭を,どのくらいの弾速で押し出すのが一般的と考えられるか?ということくらいです.Hodgdon のレシピによれば,300WSM には 110-220gr 弾頭が掲載されていて,中央値(平均ではない)は 168gr です.市販装弾は結構強めなので,これを Max に近い 3100fps で撃ち出すとしましょうか. オンラインでも使える弾道計算ソフトはいろいろあると思いますが,ここでは JBM Ballistics の Trajectory Calculator を使ってみます.弾頭は Barnes の TTSX (BC=0.47)ということにしましょう.100 yard zero で,以下のようになります.
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いろいろ条件を変えて計算してみるとよいかと思います.
posted by ともぞう at 21:30Comment(0)

マズルクラウンが重要な理由

過渡弾道とは弾頭が銃口を離れる直前から10cm乃至数十cmくらいまで進む間に起こる現象です.非常に短い間の現象ですが,そのあとの弾道に大きな影響を与えることが知られています.バレルの中を弾頭が進行している間は,後ろから高圧ガスによって押されています.弾頭の速さは,このガスの燃焼によって膨張する速さより当然速くはならないわけですが,すなわち弾頭が銃口を出た瞬間からしばらくの間は,銃口から吹き出す燃焼ガスや微粒子に押される形で加速を続けます.具体的には概ね口径の10倍程度の距離までは弾頭は加速しているという測定結果もあります. このガス等の噴出は完全な対称性を持つわけではなくて,非常に複雑な運動をするため,これにより弾頭の進行方向が微妙に変化します.これを跳起角といって,実際に弾頭が進行する向きは銃身の向きとの間に差が発生するわけです.完全に同じところを狙っていても,着弾がずれることは射撃をしていれば必ず経験するわけですが,その原因の一つはここにあります. よくライフルのマズルクラウンは傷つけないようにしなさいだとか,この銃のクラウンはラウンドだ,はたまた何度になってるだとか言うように,クラウンを重視する人が多いですが,それにはこのような理由があるわけです.
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弾道学の分類

最近になってようやく弾道学を勉強しはじめたわけですが,単なる力学の一分野であるとの認識は必ずしも当てはまらず,未だに複雑化,そして進歩し続けているおもしろい分野であることが分かりました.これを紐解くにはまず弾道学をいくつかに分類しながら,それらの連携を考える必要があります. というわけで,まずは現在弾道学が大まかにはどのように分類されているかを述べてみます. (1)砲内弾道:火薬の膨張ガスによって弾頭が砲内を加速し,これが砲外に出るまでの事象を扱う分野です.弾頭,推進薬,砲身の間に最適な関係を作ることが目的です. (2)過渡弾道:銃口から射出された弾頭は,その後ろからそれより速く燃焼ガスが追ってきており,それにより影響を受けます.また砲身軸と弾頭の飛び出し角の間に予知の難しい差が発生することが知られており,これを「跳起」と呼びますが,この現象による砲外弾道への影響も考えられるのですが,これも過渡弾道に分類されています. (3)砲外弾道 古くから研究されてきた分野で,単に「弾道学」といえば,これを連想する人も多いでしょう.私もその一人でした.世界最初のコンピュータである ENIAC (1944) も元はといえば弾道計算の為に開発されたものです.単に質点の運動であれば単純な物理モデルで説明が出来ますが,実際はそういうわけにはいかず,流体力学や気象学までもふくめた広汎な知識が必要な学問分野です.とはいえ,これ以外に分類された弾道学の分野に比べれば進歩しているので,コンピュータシミュレーションでかなりのことが分かるようにはなっています. (4)終末弾道 炸薬が内蔵されているような弾頭では特に重要なテーマですが,ここではライフルや散弾銃のことのみ扱います.それでもその弾頭がゲームに当たった後の振る舞いは狩猟においては重要です.軍事系の研究ではもちろん破壊弾道学などとよばれ,現在(本職の)弾道学の研究でもっともホットなトピックですが,紙撃ちの範囲では無視できますね. これらは独立して存在するわけではないので,結局はトータルで考える必要が出てきますが,課題を分解して考えていくときには有用な分類と言えそうです.
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尖弾の水面入射角と跳飛角

またまた磯部先生の本[1]からの話題です.三八式歩兵銃での実験ですが,113grの試験弾頭での結果を見ています.水面に入射する角度と水面から離脱する角度については以下のような図があります.
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これによると入射角が小さいときは,跳飛角はその三倍になるということです.前稿では球の場合を述べましたが,それに比べると跳飛角が大きいことが特徴と言えそうです.入射角が6度20分で跳飛角は極大値をとり,今度は逆に減少していき,9度30分で極小,そしてまた大きくなっていくというおもしろい特性となりました.そして14度20分が跳飛する最大入射角で,これ以上になると水中に侵入します. また跳飛する方向が入射角で変わってくることが以下の実験結果の図で示されています.
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これによると入射角が小さいときは右に跳飛し,6度20分より大きくなると左に跳飛します.この境目の角度は上で書いた跳飛角が極大値になる入射角になっています. これらの結果は三八式歩兵銃の制式弾と同じ大きさの真鍮製の試験弾によるものなので,形状が変わるとまた数値は変わっていくと考えられますが,いずれにしても水面での跳飛という簡単そうにみえる現象でも,実は紐解いてみると非常に複雑なメカニズムが隠れていることが推測出来て興味深いものです. 参考文献 [1] 磯部孝著:水中弾道の研究,東京大学出版局 (1975)
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水面跳弾原理

というわけで,昔の書物[1]を紐解いているわけですが,この本では最初に水面での跳弾についての説明がありましたので,採り上げてみたいと思います. 講習会などでは水面では跳弾が発生するから気を付けるようにと言われますね.このときの説明では,高速の物体から見ると水はコンクリートのように硬いため,はじかれるのだ,ということになっていたように記憶しています.ところが,これは間違いでした. 球体を水面に撃ち込んだときの振る舞いについて最初に研究を行ったのは Carl Ramsauer で,その論文[2]の中にはこのような記載があります.
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これによると,約620m/s で直径11mmの真鍮と鋼鉄の球を撃ち込んだとき,入射角が 6°29'より小さい場合は跳ね返る,それより大きいと潜り込む,という結果になったそうです.そしてこのとき,この境目の角度は球の大きさや弾速には関係なく一定になりました.ただし後年の研究でこれより大分早くすると若干この角度が大きくなると言う結果が得られているようですが,いずれにしても臨界角は7°くらいということですね. で,このとき球の経路を見ますと,必ず水面から一度潜り込んでから上がってくるのです.要するに水面で跳ね返るのではなく,水中で揚力が発生することで上がってくるということです.これらは同じように見えても跳弾の原理が全く異なります.片や反作用で戻ってくるのに対し,本当は揚力で上がってくるわけですからね.尖頭弾でも同じような現象がおきますが,これについても面白そうなところを後で紹介したいと思います. 参考文献 [1] 磯部孝著:水中弾道の研究,東京大学出版局 (1975) [2] C. Ramsauer, Über den Ricochetschuß, Kieler Dissertation, 1903, Der Einfluß freier Oberflächen und fester Wände auf schnell bewegte Kugeln im Wasser, Ann. Phys., IV Folge, Bd. 84, S. 721(1927)
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射出で失われる弾頭質量

実のところ射撃からハンドロードに興味の中心が移ってきており,以前「弾薬学」 "Ammology" という学問分野を提唱しました.しかし,狩猟において重要なのは終末弾道 "terminal bullistics" であり,また標的射撃においても砲外弾道 "exterior ballistics" が主眼となってきます.弾薬学は直接的には砲内弾道 "interior ballistics" に隣接する学問分野と考えていますが,実際の処はあくまでも弾道学を踏まえた上での弾薬学であるので,まずは弾道学から勉強すべき,と考えて何冊か図書館から面白そうな本を借りてきました.いやぁ,昔からいろいろ研究されているものですね.これを機に過去の研究の紹介や,自分の研究も紹介して行けたら良いなと思い,新しく「弾道学」というブログテーマを設置しました.初回である今回は読んだ中からおもしろいなと思った研究結果を一つご紹介します. 射出されたライフル弾頭にはライフル痕が残っていますね.削られるのでその分質量は変わるわけです.砲外弾道を計算するときには実際のそのときの質量が重要ですから,これを知る必要があるかも知れません.で,この本[1]では実際に試射した結果が載っていて,定式化されています.
m0 - m = 0.00005 l V
ここで,m0, m は射出前後の弾頭質量(g),l は弾の銃腔とふれあう部分の長さ(cm),V は初速(m/s) です.この式は三八式歩兵銃において真鍮製の弾丸を射出した場合ですが,現在の銅合金のジャケット弾においても参考になると思います. ちなみにこの書籍での実験結果では長さが 25 mm の真鍮円柱弾頭で,弾頭質量の 2% が失われるケースもあるそうです. 参考文献 [1]磯部孝著:水中弾道の研究,東京大学出版局 (1975)
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弾薬学の提唱 - Advocating Ammology

弾道学は力学の一分野ですね.空気中を飛行する物体に関する力学ですから.これは多くの場合 Exterior Ballistics を指しています.実際の所は銃腔内における振る舞いである Internal (or interior) Ballistics と,目標物に当たってからの振る舞い Terminal Ballistics も全てあわせて Ballistics (弾道学)を構成しています. ところでリロードの為にいろんな本を読んでいると,ふと思うことがあります.弾頭を前進させる力は火薬の爆発力ですから,これは熱力学や流体力学はもちろん化学も含んだ知識,いわば火薬学が必要です.また弾頭鋳造をしていると,金属学も深く関係していることが分かります.これらはそれぞれ単体では学問として成り立ってはいるものの,弾薬を構成するための知識をこれらの研究結果から抽出しようとすると難しいです.というのも弾薬のための研究をしている人が少ない(いない?)からです.そのためこれらを集積した「弾薬学」としてはまだ成立していないのではないかと思われます. 要するにいろんな関連書籍を読んでも,ほぼ定性的にしか論ぜられておらず,本来決定論的に記述できるはずのことが定量評価されていないのです. 市販されている銃,弾頭,火薬,雷管,薬莢の組み合わせは無尽にありますが,もちろん定性的な,ある意味経験に基づく選択によって,かなり絞ることは出来ますから,弾職人(ammosmith)という分野はあります.しかし,定式化された尺度がないため試行錯誤をすることになります.もちろん我々は趣味で射撃をしているわけですから,その試行自体が楽しいわけですが,これらの試行錯誤から得られたものをまとめる努力をして伝えていけば,百年くらい前から何にも変わっていないこの分野が何か変わっていく気がします. というわけで,弾職人(ammosmith)から弾薬学者(ammologist)への脱却をめざして,弾薬学(ammology)を提唱します. という夢の話でした.笑
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