減装弾の異常腔圧現象

リロード時に火薬を入れすぎると危なそう?とは素人でも思うことでしょうけど,実際は通常使用されるタイプのライフル用緩燃性火薬を使う限りは,薬莢にめいっぱい火薬を入れても危ないレベルに達するケースはそれほど多くありません.それより危ないのは,ライフルに間違ってピストルや散弾用の速燃性火薬を使うことです.いつもライフルで使っているような薬量で速燃性火薬を入れてしまうと異常に腔圧が高くなり,銃身が破裂,大変な事故につながります.

逆に火薬を少なくしていくとどうなるでしょうか.弾速が遅くなって,ある程度以上少なくするとバレルの中で停弾してしまいます.ライフルの場合は弾頭の除去は大変で,場合によると廃銃なんてことにもなってしまいます.まあそれは極端な例ですが,停弾しない程度に減装できれば,軽く撃てて体力的にも助かるし,日本では火薬は高価なので経済的にも助かります.ですから,盛りを少なく,数を撃ちたいって需要もあるわけです.例えば私とかね.笑

ところで昔から「極端に減装すると銃が破損するほどの異常腔圧が発生して事故になることがある」と言われています.しかし火薬メーカーも実験したそうですが,そのような現象は再現されなかったとのこと.どうせ素人のやったことだから,最初の弱装で停弾し,気付かずにもう一発撃っちゃったんじゃないの?なんて私は思ったのですが,そういうわけでもないらしい.

私も弾薬学という学問領域を広げたくて,金属学や火薬学などいろんな本を読んだのですけど,なかなかこの現象を説明したものに出会いませんでした.実はそれって火薬をたくさん売りたい人たちの創作で,半ば都市伝説みたいなものなんじゃ?なんてことすら思っていたりした昨今,専門書でようやくそれに近づく記述にあたりました.

火薬を発射用途に使う場合に求められる安全性の一つに「腔発を起こさないこと」というのがあるそうです.本来発射薬は爆轟(=破壊的な爆発)を起こしてはならないし,そうならないように作られているのですが,あるとき,火薬が -30 ℃ 程度の低温にさらされ,薬粒がくずれたことで,腔発を起こした例があるそうなのです.簡単に言えば,火薬が粉になっていると爆轟の危険があると言うことです.火薬は粒の大きさでも burn rate を調整しているので,理に適った話ではあります.が,粉になったからと爆轟までするとは知らなかった.

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この記述から推測すると,昔から「減装で異常腔圧が発生した」と言われているのは,このタイプの爆轟が起こったことによるものと考えられます.低温にさらされた可能性もあるし,そうでなくても薬量を少なくしていると,当然薬莢内で火薬が遊びます.このような状態で散々シャカシャカさせれば,中の火薬粒が崩れて粉末状になってしまうケースもあるかも知れません.

狩猟の場合,寒い中,弾を持ち歩いて,帰るまで結局使わなかったというケースはとても多いです.そうやって何度も出猟を重ね,薬莢内の火薬が段々粉になっていくと,いつか爆轟に至る弾が出てくるかも知れません.だから狩猟用の装弾は二猟期しか持たせないってことにしているのかも知れませんね.まあ私の場合,そんなに寒いところには行かないし,弾も大盛り(笑)にしてるので,そういう事故はないと思いますけども.昔から,火薬自体の経時変化で感度が高まって危なくなるのが原因なら,射撃用にも使用期限があってもおかしくないのに,なんで猟の弾だけそういうルールなのだろう?と不思議に思っていたのです.

というわけで結論.減装すること自体が危険なのではなく,粒が崩れて粉になることで爆轟を招く可能性がある,というのが現在の私の考えです.またいつか新しい知見が得られたらエントリします.

あ,ちなみに減装しすぎると,うまく燃焼しきれなかったりするようで,タール状の残滓が残ったりします.これはこれで良くないので,そこまでは減装しない方が良いでしょう.

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